個人情報保護法の本筋と企業のとるべき道

セミナーに参加してきました。内容は、後で書きます(汗)
えーっと、別にIRCとかメールとかやりながら聞いてたので、メモが十分にとれてない、というわじゃないですぅ。ちゃんと内容を整理しないと、blogにアップできる程におさまらないんですー(涙)

以下、2004/8/31に追記


◆プログラム

    1. 個人情報保護法の本質と企業の取るべき道(講師:稲垣隆一弁護士)
    2. 個人情報保護に関する効果的な管理の仕組み〜プライバシーマーク取得手法〜(講師:(株)JMC 打川和男様)

個人情報保護法の本質と企業の取るべき道
 ()内に記述されている*条は、個人情報保護に関する法律の条文です。

 ◆第1講 個人情報保護 よるべき基準は何か◆
  ●個人情報保護法
   ・民間企業が個人情報保護法に対応するにあたり、
    原理となることは3つ。
    利用目的の特定、安全管理措置、情報主体への対応。

   ・個人情報をどのように取り扱うかの一時判断は会社。
    最終的には裁判で行われる形になる。

   ・よい法律は「要件と効果」しか書かれていない。
    法律を読むときは、要件と効果をわけて読むと分かりやすくなる。

   ・損害賠償等は、民法、商法に基づいて行われる。
    「人の権利を損害した場合は賠償することができる」という内容の
    記述が民法にある(民法709条)。
    この民法の条項に基づき、さし止めを請求できる。
    民法709条「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ
    之ニ因リ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」。


  ●情報とデータについて
   ・情報とデータは違う
    - 情報:JISの中に定義がある。情報そのもの。
    - データ:情報を加工したもの
     (JISハンドブックを持っていたほうがよい)

   ・情報は誰のもの?
    情報は情報主体(その人個人)のもの

   ・データは誰のもの?
    データは、その会社システムにあったように加工したもの。
    ではデータは、会社の物?情報主体の物?あるいは両方のもの?
    →結局は、情報主体の物、と解釈できる。
     これはプライバシーの本質。

   ・個人情報保護法に遵守する意義は何か?
   「個人情報保護法を遵守することで、社会に認められ、
    会社として存在し続けるため」

  ●第1原理:目的拘束
   ・目的拘束の原則
     - 取扱が可能な範囲(15条、16条ⅠとⅡ)
       o あらかじめ本人の同意がある範囲(同意基準)
       o 利用目的の達成に必要な範囲(客観基準)
     - 変更可能な範囲
       o 相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲

   ・目的拘束の原則の例外(4つある。18条Ⅳ)
     1)利用目的を通知または公表することで、本人の権利利益を
      害するまた害する恐れがある場合
     2)利用目的を通知または公表することで、個人情報取扱事業者
      権利また利益が不正に損害を受ける場合
     3)利用目的を通知または公表することで、国や自治体に協力して
      行う当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき
     4)取得の状況から見て、利用目的が明らかであると
      認められる場合

   ・例外について
     「利用目的を通知または公表することで、個人情報取扱事業者
     権利また利益が不正に損害を受ける場合」と定義されているが、
     「コストがかかるので対応できません!」という理論は
     通用しない。→コストがかかるのはあたりまえ。
     そもそも、例外にはのらないように。

   ・これなら個人情報保護法にしなくても良いかもしれないケース
     会社としての方針が以下のケース。
     「資本調達は全て自分で行います。銀行からお金を
      借りたりしません。個人情報は一切持ちません。
      株式?関係ありません!」
     →実質、個人情報保護法に対応する必要性はなくなる
      可能性があるかもしれない。

   ・普通の会社のケース
    個人情報を保護するのは当たり前。

   ・コンプライアンス
    監査した場合に証明できるだけの根拠が必要。
    方針だけ公表し、実体がないのはだめ。


  ●第2原理:情報セキュリティ
   ・セキュリティ対策の義務
     - 努力義務
       1)正確性の保持(19条)
        正確最新の内容に保つように努めなければならない
     - 具体的義務
       1)安全管理措置(20条)
        安全管のために必要かつ適切な措置を講じなければならない
       2)従事者の監督(21条)
        従事者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならい
       3)委託先の監督(22条)
        委託を受けたものに対する必要かつ適切な監督を
        行わなければならない

   ・第三者提供の禁止と許容
     - 事前の同意なくして第三者提供負荷(23条Ⅰ)
     - 例外あり(23条本文)
     - オプトアウトの例外(23条2項)
     - 外部委託等の例外(第三者にあたらず)(23条4項)


  ●第3原理:権利者対応
   ・権利主体に対する対応1
     - 保有個人データ関連事項の公表義務(24条)
     - 利用目的の通知義務(24条Ⅱ)
     - 通知しない旨の決定通知(24条Ⅲ)
     - データの開示義務(25条Ⅰ,Ⅲ)
      (個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を
       及ぼす恐れがある場合は例外(人事データ等))
     - 開示しない旨の決定通知(25条Ⅱ)

   ・権利主体に対する対応2
     - 時事相違を理由とする訂正・追加・削除請求・応諾義務(26条)
     - 目的外利用・不正取得を理由とする利用停止請求・
      応諾義務(27条Ⅰ)

   ・権利主体に対する対応3
     - 第三者提供の利用請求と応諾義務(27条Ⅱ)
     - 利用停止等の際の通知(27条Ⅲ)
     - 理由の説明(28条)

   ・権利主体に対する対応4
     - 開示などに手続きに応じる義務(29条)
     - 手数料(30条)
     - 苦情処理の手続きの義務(31条)


  ●個人情報の保護に関する基本方針(閣議決定(平成16年4月2日))
   ・個人情報取扱事業者等が構ずべき個人情報の保護のための
    措置に関する基本的な事項(個人情報取扱事業者に関する事項)
     1)事業者が行う措置の対外的明確化
       - 会社がやることを明確にし、公表すること。
        (プライバシーポリシーを作って公表すること、等)
        →プライバシーポリシーは「宣言」
         だからといって「考えかたなだけで責任はとらない」
         という議論は成り立たない。
         これからは、「個人情報保護を遵守します」と
         書きたくなるが、監査して実態を証明できるものを
         作る必要がある。
         実態がないままポリシーを作っても、ポリシーに対して
         責任を取る必要がある。責任をとらない、とは
         公の場では言えない。

     2)責任体制の確保
     3)従事者の啓発

   ・個人情報の保護に関する基本方針に基づくプライバシー
    ポリシー策定時の留意点
     1)プライバシーポリシーの策定は、遵法経営の問題
     2)プライバシーポリシーの策定は責任を伴う
     3)プライバシーポリシーの内容に盛り込むべきこと
      個人情報保護法の遵守、関連法案の遵守、など。
     4)プライバシーポリシー策定に際しての留意点



 ◆第2講 情報漏洩の責任とリスクへの対処◆
  ●情報漏洩の責任とリスク
   ・情報漏洩は、経済原則のもと、事件が発生する。
    「お金になるから」
   ・最終的には、人間系のセキュリティが大切。
    情報漏洩が発生すると、会社の経営戦略に影響を与える。



 ◆第3講 全面施行までに企業がなすべきこと◆
  ●ウオレン・ブランダイスの提訴した課題
   ・基本思想
    人はもともとどう関係してきたか。
    個人情報・個人データのオーナは本人。
    本人のコントロールが確保されるべき。
   ・現在も、ブランダンス氏が1890年に提訴したプライバシーの
    問題と基本思想は同じ。


  ●社内体制
   ・体制整備の前提作業
     - 個人情報をイメージ
     - 個人情報を把握する
     - 個人除法取扱業務を洗い出す
     - 業務の根拠と責任者を洗い出す
     - 個人データとするか保有個人データとするかを峻別
     - リスクアセスメント

   ・整備すべき体制
     - 個人情報を一元的に把握できる
     - 利用目的の通知・公表・明示ができる
     - 第3者提供が禁止される
     - 保有個人データの利用目的・請求手数料、その他政令規定
      事項の公表(24条Ⅰ)
     - 請求受理・決定・通知ができる
     - 本人の特定と同定ができる。
       o 間違えば、情報漏洩事件に発展
       o 本人=情報主体
       o 請求者が本人であることの同定
       o 特定方法を紛失した場合の再発行手順を定める必要がある
     - 保有期間・削除・破棄時期の明確化と事前通知は
      紛争を予防する

   ・情報セキュリティとコンプライアンスの確保(なにをなすべきか)
     - 情報セキュリティに関する個人情報保護法の定め
     - 情報セキュリティマネジメント
     - 情報セキュリティ対策の客観化
     - フォレンジック
     - 情報管理の適法性確保
     - 例外判断の体制


  ●安全対策の構築
   ・安全対策
     - 安全対策にできることを考える
       o プライバシーマークをとっても事故はおきる
       o 安全対策には限界がある
        →安全対策の目的をどう捉えるか?
       o 実態をもってポリシーを公表するべき
     - どう構築するか
      目的は、「必要性」と「合理性」を「立証」し、想定しうる
      脅威に対するリスクと責任の統制を確実に行うこと。
      考えられる枠組み:
       o セキュリティマネジメント:ISMS
       o セキュリティ技術・システム:ISO15408

   ・自社員、外部委託先の監督
     - 自社員に対する管理・監督義務をどのように果たすか?
      →監査の実施
     - 個人情報処理の外部委託において、どこまで監査等を
      行うべきか?
       o 契約時のチェック
        →自社のISMS、リスクレベルとの関係で契約内容は決まる
       o 契約途上の監査
        →何をすべきかは自社と同じで、どのようにすべきかが
         異なる。
         先方をチェックする、同時に自社のチェックが完全に
         行われる環境を作る(監査チェックリスト・簡易型)



◆個人情報保護に関する効果的な管理の仕組み
 〜プライバシーマーク取得方法〜

 ◆プライバシーマーク制度とは?◆
  ●プライバシーマーク制度
   ・個人情報保護法と同じような対策基準
   ・情報主体の権利を確保しなければならない、というのがポイント。


  ●法制化の背景
   ・OECD8原則(1980年)がベース
   ・日本では、1988年に「行政機関の保有する電子機器処理に
    関わる個人情報の保護に関する法律」が制定。
   ・民間では、1989年に指針、1997年にガイドライン
    1998年にプライバシーマーク制度、1999年にJIS化(JIS Q 15001)。
   ・2003年に、民官ともに「個人情報保護に関する法律」に統一。


  ●プライバシーマーク制度
   ・個人情報に対して適切な処置(収集、利用、管理、権限の保護)
    をしている企業に対して認定。8/25現在854件。


  ●コンプライアンスプログラムの概要
   ・Plan(体制の確立)、Do(適切な運用)、
    Check(定期的な確認)、Act(常に最良の状態を維持)の
    ライフサイクル。


  ●プライバシーマーク制度の使用許諾事業者の分類
    1)お客様(消費者)が情報主体であり、主となる事業活動に
     個人情報の利用が直接関連する事業者(直接収集)
    2)お客様(企業)より、業務委託のために個人情報を預託される
     事業者(間接収集)
    3)お客様(企業)より業務委託のために、消費者から個人情報を
     収集する事業者(直接収集)


  ●プライバシーマークの認定を受けるためには?
   ・付与指定機関の団体に所属する事業者の場合:
     1)事業者から付与指定機関に申請
     2)付与指定機関で書類審査
     3)付与指定機関が事業者で現地調査
     4)付与指定機関で評価
     5)付与機関(JIPDEC)に付与審査合格報告
     6)付与機関から事業者へ付与・契約

   ・上記以外の事業者の場合:
     1)事業者から付与機関(JIPDEC)に申請
     2)付与機関で書類審査
     3)付与機関が事業者で現地調査
     4)付与機関で評価
     5)付与機関から事業者へ付与・契約

   ・書類審査の対象
     - 役割、責任・権限および体制の確立
     - 教育の実施
     - 監査の実施
     - 消費者窓口の設置
     - 情報セキュリティ対策の実施
     - 委託先管理の実施

   ・現地調査の対象
     - 代表者へのインタビュー
     - 運用状況の確認
     - 現場での実施状況の確認



 ◆JISQ15001とは?◆
  ●JISQ15001
   ・規格の概要
    「個人情報保護に関するコンプライアンス・プログラムの要求事項」
     - 国内標準規格(日本工業規格
     - 個人情報保護に関するマネジメントシステム規格
     - 規格の狙いは「信頼の獲得・安心の提供」
   ・規格の要求項目
     - 要求事項は25項目
       o 個人情報保護に関する体制面に関する要求事項:13項目
       o 個人情報に特化した要求事項:7項目
       o 個人情報データ書類に特化した要求事項:3項目
       o 情報主体の権利に関する要求事項:2項目
     - 個人情報保護法マッピングできる。ないものは、以下の2つ。
       o 個人情報保護法28条:開示しない理由について
       o 個人情報保護法30条:開示する手数料に関する



 ◆コンプライアンス・プログラム構築の成功のポイント◆
  ●個人情報の特定
   ・規格の要求事項
    「事業者は、自ら保有する全ての個人情報を特定するための手順を
     確立し、維持しなければならない」
   ・ポイント
     1)自社で取り扱う「個人情報」ごとに、入手〜破棄までの一連の
      流れを明確にし、どのような「データ」や「書類」が含まれて
      いるかを明確にする。
     2)調査の結果に基づいて、個人情報取扱業務の適切性確認を
      行うことが重要。

  ●リスク評価
   ・規格の要求事項
    「事業者は、特定した個人情報に関するリスク(個人情報への
     不正アクセス、個人情報の紛失、破壊、改ざんおよび
     漏洩など)を確認しなければならない」
   ・ポイント
     1)各「個人情報データ」や「個人情報書類」にどのような
      リスクが存在するかを明確する。

  ●要求事項の実現
   ・規格の要求事項
     1)個人情報の収集に関する措置
     2)個人情報利用及び提供に関する措置
   ・ポイント
     1)ギャップ分析
      各「個人情報」の現状と規格が要求している事項の
      現実度合いをチェックする。
    
  ●コンプライアンス・プログラム文書の作成
   ・規格の要求事項
    「事業者は、個人情報を保護するための内部規格を策定し、
     維持しなければならない。内部規格は次の事項を含まなければ
     ならない(6項目)」
   ・ポイント
     1)要求事項の解釈が重要(規格は、WhatがあってHowがない)
      規格は、何をしなさい、しか要求していない。
      したがって、“どのように”を組織で決め実施することが
      ポイント。
     2)単に形式的な「規定」ではく、従業員がその手順に規定された
      業務に直面したとき具体的に「何をしなければならないのか」
      「何をしてはいけないのか」を理解して実行できるように
      内容を作成する。

  ●導入教育の実施
   ・規格の要求事項
    「事業者は役員及び従業員に、適切な教育を行わなければならない。
     事業者は、関連する各部門及び階層において、その従業員に
     次のことを自覚させる手順を確立し、維持しなければならない。」
   ・ポイント
     1)手順の理解も重要!
      規格は、如何に自覚させるかを要求(自覚も重要!)。
       - 自覚させる対象の検討(組織が決めること)
       - 自覚させる手段の検討(組織が決めること)

  ●まとめ
   1)規格を作ることだけが目的ではない
    如何に従業員が理解しやすい手順を策定するか、
    また、その策定した手順を認識させるかが重要。

   2)プライバシーマークの取得がゴールではない
    コンプライアンスプログラムの本質を全従業員が理解し
    (そもそも、個人情報は情報主体のもの)、
    (ライフサイクルに基づいて)継続的に改善し続けることが重要。